関東若手市議会議員の会『子どもの虐待はなくせる!』を読みました

 今月半ばに読んだ『子どもの虐待は無くせる!』ですが、これは多角的に児童虐待の問題について書いている良書ですので、少し感想の投稿が遅れました。というよりも、感想を書かない方が良いかもしれないと考えたこともありますが、やはり多くの方に読んでほしいので、感想を投稿させていただきます。

 なお、この記事をシェアされることは大歓迎なのですが、私の両親や恋人とFBFである方はFacebookでのシェアはご遠慮いただくよう、お願いします。無論、両親や恋人に送ることは止めてほしいです。理由は最後の方に書きます。

 この本の冒頭のたぞえ麻友議員の記事には東京若手議員の会による「児童虐待のない社会を実現するための緊急提言」が載っています。

 そこには「地域においては子育てを見守り、支え合い、通告に至る前に、児童虐待の未然防止をすることが大切」というようなことが書かれています。提言にも書かれてある通り「児童相談所への通告は子育て世代にとっての不安材料」になっているのが現状ですから、こうした未然防止が必要であることは言うまでもありません。

 矢口まゆ議員による子育て支援センターについての体験も読ませていただきましたが、この種の施設は市町村によってかなり内容に差があります。たつの市にも「子育てつどいの広場」という類似施設がありますが、ネット上で「子育て支援センター」を検索すると民間が運営している別の有料施設が真っ先にヒットすることに象徴されているように、その周知は必ずしも十分ではありません。

 もっとも、私が幼い頃と比べたらかなり建物の雰囲気も含め改善されていますから、たつの市も改善に向けて努力されているのは伝わっています。

 東京はたつの市と比べて子育て支援が充実しているイメージがありましたが、それは矢口議員のような方が声を上げた成果ですので、たつの市においても大いに参考にさせていただきたいです。

 一方、「虐待が起きやすい環境」と言っても素人の目には判断しにくいことが少なくないことは、この本を読みよく判りました。

 日本SRGM連盟でも講演していただいた虐待サバイバーである東友美先生の体験談も載っていますが、その体験を読むと、同じ親でも子供によって態度を変えるケースがあることが判ります。

 また、東先生が書かれていた性教育に関する話も、深く共感しました。

 今の日本の性教育が遅れていることは既に各所から指摘されていますが、私自身、東先生と同様に精子が空気中を漂うのだと漠然と思っていました。

 他にも、中学校の体育の着替えが男女同室であったり、高校の性教育も男女一緒であったり、とかなり問題のある教育であったと記憶します。もっとも高校の保健体育の先生は、保健担当の先生が女性であることもあったのかもしれませんが、比較的良い教育をされていたとは思います。

 今の日本で性教育がタブーになっている結果、何が起きているかと言うと、例えば私の世代では高校の生物の授業の生殖についてで、何故かウニの発生について学びました。

 昨年、塾の生徒に同じ単元について教える際に「私らの頃は何故かウニの発生を教えていたけど、流石に今の時代はそんな事はないと思いますけどね」と言いながら教材の当該ページを開くと、バッチリウニについて載っていたので言葉を失いました。

 多くの高校生は保健よりも生物の授業で生殖について詳しく知るはずです。そこでカエルとウニの胚について教えられ、人間の場合はカエルよりもウニに近い、等と教えられても人権意識など抱きようがありません。

 無論、日本では人権教育自体が遅れている面もありますが、人権教育の一環としての包括的性教育は絶対に必要です。

 またゲイの当事者である石坂わたる議員の文章ではLGBTについても触れていましたが、私もLGBTでは無いもののアセクシャルの当事者です。

 冒頭に書いた文章の意味は、私はアセクシャルであることを家族や恋人にカミングアウトしていない、ということです。

 カミングアウトしていないのに、何故か母からは彼女が出来る度に「○○ちゃんと子供作れるんか?」と聞かれます。何かを察知されているのかもしれませんが、カミングアウトする気はありません。恋人には必要があればカミングアウトしなければならないでしょうが、幸いにも今の彼女についてはそういう必要が今のところありません。

 私の親友で日本SRGM連盟の仲間でもある鈴木志帆さんは家族にも彼氏にもカミングアウトしているようなので、本当に凄いと思いますし、恋人にカミングアウトする必要が今後生じたら見倣おうと思っていますが。

 だから東先生や石坂議員の勇気には心から尊敬しますし、そういう人たちのお蔭で私も(両親や恋人が見ていない媒体では)アセクシャルであることをカミングアウト出来るようになっています。

 もっとも、アセクシャルであることのカミングアウトにはやはりリスクの方が大きいです。私に対しても詐称アセクシャルだというデマが拡散されていますし、日本SRGM連盟についても百人以上の会員がいるのに私一人だけだというデマが流されています(先述の鈴木志帆さんのように、実名を公表している会員だけでも私以外に複数いるのですが)。

 さらに家庭連合(旧統一教会)によるSRGM(LGBTs)への差別的なデマも、実はかなり、家庭連合と無関係の人にまで広まってしまっています。中にはプーチン大統領による同性愛者への差別的な政策を対して右寄りでもない人が称賛している投稿をSNSで見かけることもあり、怖ろしさを感じます。

 そして、重要な点はこうした悪意ある人間によるデマは論外ですが、性教育が充分でないことによる無知も充分、カミングアウトを躊躇させる原因である、ということです。

 例えば世間では「健康な人間には性欲がある」と言う言説と「性欲とは性行為をしたい欲求である」と言う言説の双方があります。この両方が正しいとすると「アセクシャルの人間は不健康(病気)である」と言うことになってしまいます。

 実際には、性欲とは自分の意思と関係なく起こる不随意の生理現象であり、排泄欲の一種に過ぎませんから、性欲があるから性行為をしたくなるわけでは、ありません。また、男女問わず自慰をしない人もいて彼らは別に不健康では無いですから、性欲が無いことは別に不健康を意味する訳ではありません。

 なお性暴力の多くは性欲ではなく支配欲に起因すると言われています。この点も含めた包括的性教育が必要であると考えます。

 話を児童虐待に戻すと、例えばたぞえ議員は「相対的貧困」の話を書いていました。私自身も貧困層育ちで、高校時代は学校で唯一の携帯電話を持っていなかった生徒ですから、この話は他人事ではありません。

 「隠れ貧困世帯」の人間は都市部以上に地方で多いと思います。中小企業の正社員の給料が大企業の非正規労働者よりも低い、ということも地方では当たり前にあります。

 少し調べると東京では時給1500円のコンビニのバイトがありますが、兵庫県ではコンビニのバイトは九百円台です。東京の方が物価は高いので「隠れ貧困世帯」の問題は表面化しやすいですが、地方に住む私たちにとっても意識しないといけない問題です。

 また、石坂議員は「虐待を発見して親子を分離する機能を持つ機関と、親が安心して相談できる機関を分ける政策的判断もあり得る」と述べていますが、それは私も同感です。

 実際、関西では妊娠の不安を相談した女性が「特定妊婦」に指定され(これは本来妊婦さんを支援するための制度ですが、その市では特定妊婦への指定が本人に通知されないため支援に繋がっていない)、虐待の可能性が高いと児童相談所にマークされるような運用が行われている自治体もあります。

 この本で記されていることは多岐にわたるためまとまりの悪い感想になってしまいましたが、自治体レベルで出来る対応も多いことは、地方で政治活動をしている私のような人間にとっては、するべきことを教えてくれてとても有難い本です。無論、政治に関心の無い方も虐待には様々な側面の社会問題があることを学べますので、とてもお薦めです。

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