「論憲」の根幹となるのは基本的人権の尊重――綱領に「人権」の無い自民党との根本的な違い

 泉健太先生が改めて「論憲」について説明するツイートをされました。

 立憲主義を巡る議論が軽視されてきたからこそ、今の炎上騒動が起きているように感じます。

 泉健太先生が貼ったリンク先には「立憲主義は手段であり、その目的は個人の尊重、基本的人権の確保にある」という立憲民主党の立場が明記されています。

 従いまして、立憲民主党の立場は人権を制限するベクトルでの改憲論議を行う自民党とは全く違うものですし、また、泉健太先生は日本維新の会と手を握っていないと明言しています。

 立憲民主党の党としての憲法についての立場については昨日の記事で触れたので、今日は一党員である私の個人的な見解も交えながら説明させていただきます。

 私の立場を簡単に要約すると、『日本国憲法』における「立憲君主制」「基本的人権の尊重」「戦争の放棄」「国際協調主義」の四大原則を堅持・発展させる方向で正統憲法復原・改正を議論し、国民的合意を得た上で「自然の生存権の憲法明記」や「男女平等な時代に合った家制度の構築」と言った課題に取り組んでいく、というものです。

 しかしながら、この中で最も大切なのはやはり「基本的人権の尊重」です。

 自然の生存権と言うのは天賦人権論を前提としてその延長線上に位置付けられるものですし、国民の幸せな家庭を守ると言うのも、人権尊重と表裏一体です。

 例えば、自民党の支持母体である家庭連合(旧統一教会)は表向き地球環境問題解決や家庭尊重を唱えていますが、根本的に人権軽視の側面があるから、現実には環境破壊を推進している自民党を応援したり多くの信者の家庭を破壊したりしているのです。

 『日本国憲法』の根本規範は「国民主権」ですが、国民主権と人権尊重はイコールではありません。ナポレオンやヒトラーは少なくとも表向きは国民主権を支持していた訳ですが、彼らは国民主権を否定していた『大日本帝国憲法』下の日本でも有り得ない独裁政治を行いました。

 また、元祖「国民主権」の国であるアメリカは侵略戦争を繰り返しています。侵略戦争が最大の人権侵害であることは、言うまでもありません。

 そこで、戦後の日本では戦前の反省だけでなく海外諸国をも「反面教師」として「立憲君主制の徹底(象徴天皇制)」「戦争の放棄」「国際協調主義」を「基本的人権の尊重」の制度保障として定めたのです。

 仮に国民の大多数が建武の新政のような「絶対君主制」への回帰を求めたり(今のネトウヨを見ると絵空事とは思えませんが)、逆に「天皇廃止」を求めたり、或いは「アメリカの侵略戦争への参加」を求めたりしても、それを許してはならない、というのが立憲民主主義の立場であり、その背景には一度「民意」を免罪符に何でも認めてしまうと必ず人権侵害を放置することになる、との強い危惧があります。その意味で「立憲民主主義」は「絶対民主主義」と対立するものです。

 繰り返しますが、自民党と立憲民主党の最大の違いはこの「基本的人権の尊重」を重視しているのか、ということにあります。

 こういうと「自民党も基本的人権の尊重を言っているはずだ!」と言う方がいるかもしれませんが、自民党は結党以来基本的人権の尊重を綱領に明記したことはありません。

 ただ、自民党初代総裁である鳩山一郎先生(生長の家信徒、民主党結党者鳩山由紀夫首相の祖父)の主導で制定された「党の性格」には「わが党は、個人の自由、人格の尊厳及び基本的人権の確保が人類進歩の原動力たることを確信して、これをあくまでも尊重擁護」すると明記され、また「党の使命」にも「わが党は、自由、人権、民主主義、議会政治の擁護を根本の理念」とすると明記されていました。

 ところが、平成17年に小泉純一郎総裁の下で制定された綱領には、引き続き「人権」の二文字が無いのみならず、人権を「根本の理念」とする「党の使命」の内容も引き継がれず、ただ「新理念」なる文書に「わが党は、すべての人々の人格の尊厳と基本的人権を尊重する、真の自由主義・民主主義の政党」と記されるにとどまりました。

 もっとも、この時点ではまだ自民党は「基本的人権を尊重する」とは言っていた訳で、当時の自民党と民主党の間で大連立構想が持ち上がっていたのも、少なくとも「基本的人権の尊重」という大原則は共通していたからです。

 しかし、なんと民主党政権下の平成22年に自民党が定めた「綱領」では相変わらず「人権」の二文字がないばかりか、従来の「党の使命」や「新理念」に該当する付随文書も無く、さらには「新しい綱領 新たな出発」という党公式の綱領解説のパンフレットにおいてもどこにも「人権」の二文字が無い、という有様であったのです。

 その自民党のパンフレットでは「民主党は、皆で創り出した国民総生産を与党のみの独善的判断で、高所得者にまで「子ども手当」を、 米作農家に生産費補償費をばらまき、国民生活に政府が関与する政策をとっています。これを恒常的にやると、人間は弱いものですから、自立と自助の心根がなくなります。家計へのおかねの分配を政府が決めていく社会 主義の下では、豊かな国民生活をつくりあげることができなかったのが歴史の証明です」として民主党の子ども手当や農業者戸別所得補償制度を非難しています。

 同パンフレットでは谷垣禎一総裁(当時)の名前で「この綱領の精神は、時代の流れの中でも普遍的な価値を持つものである」と記されていますが、基本的人権の尊重こそ普遍的な価値ですから、それを明記していない綱領に一顧の価値もありません。

 Twitter上では泉健太先生に対して「自民党に行け」というような暴言が闊歩していました。私も同様の暴言を言われたことがあります。

 しかしながら、先ずは根本的に人権否定の自民党を倒さなければいけない、それが立憲民主党の立場であり、そのためにみんな小異を付けて大同についているのです。細かい違いで内ゲバをしている場合ではありません。

日野智貴オフィシャルサイト

日野智貴の公式サイトです。立憲民主党党員、国民民主党サポーター。

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