横路孝弘元衆議院議長薨去

 元衆議院議長横路孝弘先生が薨去されたことが報道されました。

 尊敬する政治家の一人の薨去に、深い悲しみを抱いています。

 私は横路孝弘先生についてネット上で何かを触れたことは無いと思いますが、実は、横路先生の後継者である道下直樹先生に陳情を受け付けて頂くなど、間接的にお世話になっていました。

 横路先生は旧社会党出身で、当初は二大政党制樹立にも反対する等していましたが、民主党が自由党と合流された時は、国連中心主義に基づく現実的な安全保障政策に合意されました。今の立憲民主党のサンクチュアリ(旧社会党派)が自衛隊合憲論に立っているのも、横路先生のお蔭でもあるのです。

 もしも横路先生の英断が無ければ、その後の政界再編においても、保守派の旧国民民主党とリベラル派の旧立憲民主党が合流することなど、到底できなかったでしょう。その時は既に横路先生は引退されておられましたが、そのレガシーを私たち今の立憲民主党の党員は享受させていただいていました。

 横路先生の功績の一つは、「戦争参加法制」を巡る議論において当時外務大臣であった岸田文雄首相が実際には「平和主義者」でも何でもない、ということを暴いた点にあります。

 横路先生が国会で「被害国のいわば要請と同意が必要である」ということについて確認を求めると、岸田氏は「改めて武力攻撃を受けた一方の国の要請がなくとも他国の国は集団的自衛権を行使できる」と答弁しました。

 横路先生が「日本の場合は相互防衛条約になっていない」と述べると、岸田氏は「一般国際法上、集団的自衛権の要件として要請そして同意が求められている」としつつ「要請、同意ということにつきましては、具体的な事案に当てはめて判断することである」と答弁。

 そして横路先生が「日本の方から、集団的自衛権を行使するから同意してくれという話になるんでしょう」というと「改めて武力攻撃を受けた米国が日本に対して要請や同意を与える、これは当然のことである」と答弁しています。

 こうした岸田氏の答弁を踏まえて横路先生が「日本がみずからの状況判断に基づいて集団的自衛権を行使することを認めるような、いわば慣習国際法は存在しない」「攻撃を受けている米軍を守ることになる」と述べると、岸田氏は「我が国国民の命や自由や幸福追求の権利が明白な危険にさらされている、こうした事態に対して、日本としてその新三要件に該当する場合に武力行使を行う」「米国を守ること自体を目的とするものではなくして、あくまでも新三要件に該当する場合、我が国の存立、そして国民の命、自由、幸福追求の権利が危険にさらされる明白な事態がある、こういった場合に限ってこうした行動を行う」と述べ、あくまでも集団的自衛権は日本国民を守るための権利であるとの見解を維持しました。

 しかし、横路先生は中谷防衛大臣(当時)が「日本が武力攻撃を受けない場合、受けるようなおそれが全くない場合でも新三要件に合致し得るかという寺田委員の質問に、それを認めておられます」と指摘、「武力攻撃事態でも切迫事態でも予測事態でもないときに自衛隊を出動させるということは、アメリカを守る、アメリカの艦艇でも何でも、他国防衛以外の何物でもない」と述べて岸田答弁の欺瞞を暴きます。

 また、別の日には岸田氏が「現実、具体的には、同意ということは条約の締結等において確認されるものである」と述べた時には「しかし、その条約がないわけでしょう。ないけれども、同意と御答弁されていますよね。御答弁されていますよね、要件として。」と、岸田答弁の矛盾を暴きました。

 その日は横路先生が「この同意ということを日本の集団的自衛権行使の要件として発言するに当たって、アメリカとは何か協議されたんですか」と言うと、岸田氏は「我が国として想定しておりませんので、日米の間で何か協議したという事実はございません」と、無責任な答弁に終始。

 さらに岸田氏は「米本土が武力攻撃を受けたことのみをもって日本が対応するというものではない」としつつ、「我が国に対する武力攻撃は発生していないわけですが、米国が我が国近隣において攻撃国に対する作戦を開始した」という場合でも集団的自衛権の行使が行われる可能性があるとも発言しました。

 こうした岸田氏の答弁は、一貫して集団的自衛権の行使の範囲を拡大、それも「アメリカの望む方向」に拡大しよう、というもので、我が国の防衛というよりもアメリカの軍事戦略に追随する形での集団的自衛権の行使であることが、透けて見えるものでした。

 このように岸田氏の正体は横路先生との論戦で既に明白になっていたのですが、マスコミは今に至るまで「岸田派はハト派」と報道しています。マスコミがそのような印象操作をしている間に、防衛費増税が既定路線となりつつあります。

 無論、旧社会党出身の横路先生と保守派の私とでは、防衛に関する考えはかなり違うでしょう。

 しかし、確実に言えること、それは横路先生がもしもご健在であれば、「岸田首相はハト派である」というデマなど一蹴されていたであろう、ということです。

 一部リベラル派が「泉健太よりも岸田の方がまとも」等と述べている中、リベラル派の中でも信頼の厚い横路先生の回復を待っていましたが、このようなこととなりとても残念です。

 横路先生の努力を無にしないよう、私たちは今後も頑張らせていただきます。

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